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西陣織で代表される紋織物は、地組織と紋様組織によって構成されるため、織物を切断すると幾層にもなって分厚くなる可能性を持っております。豪華絢爛な織物であっても、いかに薄い地合いで使用に便ならしなるかが織物に携わるものの技術でもあります。
桃山期から江戸期にみられる豪華絢爛たる能装束には、西陣織技術の特徴のひとつである引き箔が用いられています。この金・銀箔は、古来中国より伝来いたしました。
金・銀箔をつくる技術は、印金の手法を用いたもので「三椏」または「こうぞ」を原料とした薄くて強い紙に、漆を接着剤として、金・銀箔を貼り付け、それを細かく糸状にしたものを造りあげます。
引き箔の金・銀箔は、「三椏」または「こうぞ」を糸状になったものの表面にのみ付着されているので、非常に薄いものとなっております。これをよこ糸として織り込む際には、織面に表面が出るよう竹製のへらにて引っ掛けながらたて糸の間を通していきます。この技術は、西陣織独特のものであり、他産地では不可能なものです。
現在の西陣では、帯地や金蘭などで盛んに使われており、金・銀箔の応用として色漆、染料、顔料等を使用して文様を表す箔もあります。
原紙の「三椏」または「こうぞ」は、おもに高知県等で産し、三年生のものを二月の開花期に採取いたします。
[製作工程]
●採取・蒸込 ●はく皮 ●乾燥 ●表皮除去 ●川晒 ●撰別 ●パルプ製造 ●抄紙 |